スズキユタカ
2017/01/20
美容室でヘアカラーをした後、よく美容師さんから「今日はシャンプーしないでくださいね!」って言われませんか?
これは一般的にヘアカラーの定着には48時間前後かかる、と言われているからです。でも実はこれ、明確な根拠はないとも言われています。
スタイリング剤をつけてもらったときや焼肉を食べに行ったときなど、どうしても髪を染めた日にシャンプーしたくなることもあると思います。
よくお客様から聞かれる「ヘアカラー後のシャンプーは2日後にしないと色落ちが早くなる?」「どうしてもヘアカラー当日にシャンプーしたいときはどうしたらいい?」といった疑問にお答えしていきますね。
記事の後半では、私が実際に毛束を使って検証してみたテスト結果もご紹介します。
シャンプーによって色が落ちてしまうかどうかを理解するために、まずはそもそも「ヘアカラーがどのように髪の毛を染めているのか」を説明します。なぜなら、毛髪の状態やヘアカラーの種類によっても、シャンプーによって色落ちするかどうかが変わってくるからです。
大前提となる毛髪の構造から、ヘアカラーの種類や染まる仕組みを見ていきましょう。
髪の毛は、3つの層に分かれています。髪の表面はキューティクル(毛表皮)、その中はコルテックス(毛皮質)、そして中心部はメデュラ(毛髄質)と呼ばれていて、図のようになっています。
髪の表面は無色透明のキューティクルが何枚も重なって覆っている状態です。毛髪を摩擦などの外的刺激から守ったり、髪内部の中身が流出しないよう防いだりする役割をもっています。また、濡れると開く性質を持っています。
ひとことで「ヘアカラー」といっても、実はいくつか種類があります。その種類によって、シャンプーによる色の落ち方にも差がありますので、まずはヘアカラーの種類について解説します。
一時的に毛髪の表面に色を付着させ、一度シャンプーをすると元に戻るタイプの染毛料です。カラースプレーやカラーコンシーラー、ヘアマスカラなどがこれにあたります。
あくまで着色剤を髪の表面に付着させて、一時的に着色している状態なので、毛髪内部の色は変わりません。なので、黒髪を明るい色にすることはできません。
一時染毛料はシャンプーすると色が落ちてしまいますので、色をまだ落としたくないうちはシャンプーしないようにする必要があります。
髪に色を塗って染めるタイプのヘアカラーです。一度のシャンプーでは元に戻らないですが、何度もシャンプーするうちに徐々に色が落ちて元に戻ります。ヘアマニキュアやヘアトリートメントが半永久染毛料にあたります。
一時染毛料は毛髪の表面にしか色がつきませんでしたが、半永久染毛料の場合は、毛髪表面についた色素の一部がキューティクルの隙間から内部に浸透して色がついていきます。
シャンプーしても一度で完全には落ちないものの、シャンプーの回数を重ねるごとに色がおちていきます。
一度染めると染まった形跡がずっと残るタイプの染毛剤が、永久染毛剤です。シャンプーしても元には戻りません。
永久染毛剤のヘアカラー剤は、化粧品ではなく、医薬部外品に分類されます。美容院などで主に使われている酸化染毛剤などが該当します。
一時染毛料や半永久染毛料とは異なり、シャンプーするとすぐに色が完全に落ちてしまうことはありません。とはいえ、全く色落ちしないというわけでもないんです。
ここからこの記事では、永久染毛剤に関する「ヘアカラー後のシャンプー」のお話を進めますね。
では、果たしてカラー後にシャンプーするタイミングによって、どれくらい色落ちが変わるのか。
毛束を使って実験してみました。
ここからはかなりややこしくなりますので、結果だけ知りたい方は後半の「総評」までスクロールしてくださいw
まず、もともとの毛束はこちら。
こちらにヘアカラーの薬剤を塗布します。
髪の染まり具合や色落ちは、ヘアカラー剤を髪に塗布してから洗い流すまでの放置時間でも差があるかも知れませんので、10分、20分、30分放置をそれぞれ3本ずつ作りました。
右から順に10分放置、20分放置、30分放置です。
写真だと分かりにくいですが10分放置はやや色が薄いです。20分放置と30分放置では光に透かした時に差が出る程度でした。
カラー剤で染めた毛束を、3つのグループに分け、それぞれヘアカラー当日、次の日、2日後にシャンプーをします。
その後、髪を染めてから3週間が経過した状態にするため、計21回シャンプーしてみました。
これで、ヘアカラー色落ち実験は完了です。それでは、それぞれどれくらい色落ちしたのか見ていきましょう。
まずはカラーした日にシャンプーした場合の毛束を見てみましょう。
3日目
これがヘアカラーしてから3日目の状態です。(順序は同じく右から左に10分、20分、30分放置)
10分放置の毛束は早くも色が抜けてきています。
1週間後
さらにヘアカラー当日にシャンプーをし、その後も毎日シャンプーを続けた1週間後の状態。
意外と10分放置の毛束の褪色はそこまで進まず、逆に20分・30分放置の毛束の褪色が進んだ感じがしました。
3週間後
10分放置の毛束はやはり褪色が進み、染まり上がりよりもオレンジっぽい自毛の色素が見えてきた感じがします。
予想よりは10分しか置いてなくてもアッシュみはきちんと感じられる結果になりましたが、やはりヘアカラーした日にシャンプーをした場合、色落ちは見られる結果になりました。
次に、髪染めた日にはシャンプーせず、カラー後1日おいてから初めてシャンプーし、その後は同じように3週間分シャンプーしました。
1週間後
10分放置の毛束の色落ちが明らかに遅かったです。ほかの2本に比べるとやはり色が抜けてはいますが、当日シャンプーしたものよりもアッシュ感は残っていて明度もそこまで上がって来ませんでした。
3週間後
3週間経つと、やはり10分しか放置してないものは他の2本に比べてみると色の抜けは感じられました。
当日シャンプーしたものに比べると20分、30分放置したものは明らかに褪色が緩やかです。
結論として、ヘアカラーしてから24時間が経過してからシャンプーした場合のほうが、カラー当日にシャンプーした場合よりはヘアカラーの色落ちを多少は防ぐことができていましたが、そこまで大きな違いは見られませんでした。
さらに1日後、カラーした日から2日後に初めてシャンプーし始めるとどうでしょう?
1週間後
光の具合で24時間後のものより明るく見えますが、実際はほぼ同等でした。
3週間後
これも、同じような結果です。
10分放置の毛束だけは明らかに色落ちの度合いが違っていました。
ヘアカラー後に48時間経ってからシャンプーした場合も、やはりカラー当日にシャンプーした場合よりも色落ちを防ぐことができていました。
ただし、ヘアカラー後に24時間シャンプーしなかった場合と、48時間シャンプーしなかった場合では、そこまで差が感じられませんでした。
3つのパターンを比較してみると、カラーした日にシャンプーした場合が、もっとも色落ちが見られました。
とはいえ、ヘアカラー後、当日シャンプーした場合、24時間あけた場合、2日後にシャンプーした場合とでは、そこまで大きな差は見られませんでした。
ヘアアラーの色落ちに影響を与えたのは、シャンプーのタイミングよりも、ヘアカラーの施術時の放置時間で、10分という短い時間しか放置していないものは褪色しやすいようです。
今回の実験結果では、それぞれそこまで大きな差は見えづらかったかと思います。
しかし、これが褪色しやすい髪質だった場合はおそらくもっと差が開いていたものと推測できます。
・カラー当日は、シャンプーをしなくてもよいが、シャンプーしても問題ない。
・シャンプーのタイミングよりも、ヘアカラーの薬剤がちゃんと反応するよう適切な放置時間が必要。(ヘアカラーをする日は時間に余裕をもって美容室へ行きましょう。)
・カラー後24時間経っていれば48時間待たなくてもそこまでの差は出ない。ヘアカラー1日後でも2日後でも、どちらでも大丈夫。
補足:意外とスロウカラーの薬剤は10分放置でもそこそこ発色し定着していて驚きました!
不安な方は、担当の美容師さんにご相談いただき、キレイな色を保てるようにちょっと気をつけてみるだけでも違うかもしれませんね!
KiRANA SENDAI
スズキユタカ